このたび北里大学北里研究所病院に炎症性腸疾患先進治療センター(略称:IBDセンター)を開設させていただきました。炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease : IBD)は原因不明の慢性炎症を消化管に生じる疾患で、主にクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。原因が解明されていないために根本治療がなく、したがって治療法も対症療法が主体となっています。しかし近年、治療標的を絞った抗サイトカイン療法などが開発され、適切な治療により通常の日常生活がおくれる方も多くなりました。
炎症性腸疾患先進治療センターの目指すものは、患者さんお一人お一人へのきめ細かな診療の提供です。できるだけすべての患者さんが快適な生活をできるよう、各患者さんのそれぞれの病態を正しく把握し、各自にあった最善の治療を行えることを目指していきます。一人一人の患者さんの状態に応じて、常に患者さんと相談しながら、最も適切な治療行っていくことを目指しています。
当センターにおいては、炎症性腸疾患専門外来(IBDセンター外来)を中心として、経験豊富な医師ばかりでなく、看護師・薬剤師・放射線技師・検査技師・栄養士を含めたIBDチームで総合的に患者さんをみさせていただくようにしております。私は慶應大学病院で多くの患者さんの診療にあたって参りましたが、この経験を生かしチームの皆様と一緒に、きめ細やかな診療を行っていきたいと考えております。患者さんには炎症性腸疾患について正しい知識を持っていただき安心して治療を受けていただくとともに、ご家族や友人さらには会社や学校の方々など患者さんの周囲の方々にも本疾患を正しく理解していただき、医療側・患者さん側が共同して最善・最高の治療をめざしていきます。
質の高い先進の治療の提供のため、アジアさらに世界と交流し、世界標準の治療を確立し、さらなる先進治療を求め、世界での専門施設の拠点として中心的な働きをしていきたいと考えています。欧米では質の高いかつチーム医療のできるIBDセンターが多く設立されていますが、日本では未だ体制が十分ではなく、本センターを中心にIBDの診療に関してアジアへ・世界へメッセージを発信し、世界をリードして先進治療を普及させていきたいと考えています。
この二つを中心目標として、治療に難渋し、日常生活が普通にすごせていない患者さんが、安心して治療を受けていただくとともに、充実した毎日をすごしていただくよう努力したいと考えています。