炎症性腸疾患(IBD)とは?(潰瘍性大腸炎とクローン病)

腸に炎症が起きる多くの疾患のうち、特に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)とクローン病(Crohn’s disease; CD)という病気を指します。
これらの疾患は慢性に下痢や腹痛、下血などをきたす原因不明の疾患ですが、
近年の研究によって、本来自己の身体を守るために働くべき免疫機構がうまく働かないために、
腸や本来共存すべき腸内細菌に対して攻撃的に働いてしまうことが原因の一端ではないかと考えられています。
これらの疾患の発症は年々増加しており、厚労省の特定疾患受給者数の統計によれば、
2010年現在潰瘍性大腸炎は11万人、クローン病は3万人を超える方が罹患していると言われており、
20代から40代の比較的若年者に多いことが特徴です。

潰瘍性大腸炎とは?

わが国では、”びまん性の大腸に限局した病変をきたす疾患であり、主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である”と定義されています。すなわち、直腸から連続的に口側に広がり、最大で大腸全体にまで及びうる、大腸の表面の粘膜が侵される病気です。特徴的な症状としては、下血を伴う、または伴わない下痢と腹痛です。


【特徴】・直腸から連続する病変 ・原則的に大腸のみに起きる ・連続性・表層性の炎症 ・瘻孔・狭窄はきたさない

クローン病とは?

主として大腸に炎症をきたす潰瘍性大腸炎と異なり、消化管のどの部分にも起きうる、そして粘膜の表面だけではなく壁全体に及ぶ、非連続性の炎症や潰瘍を起こす病気です。ただ消化管各部位の中で小腸、特に回腸に最も多く発症し、時として潰瘍がひどくなると腸から腸以外のほかの臓器や皮膚につながってしまったり(瘻孔)、腸が狭くなって通過障害・腸閉塞を来たしたり(狭窄)することがあります。また、痔瘻などの肛門部病変を併発することも特徴です。


【特徴】・消化管のどこにでも起きる ・小腸・大腸・肛門に多い ・非連続性・全層性の炎症 ・瘻孔・狭窄