IBDにはどのような治療があるの?

現在炎症性腸疾患の患者さんに使用できる治療には、以下のようなものがあります。

5-アミノサリチル酸(ASA)(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®

クローン病、潰瘍性大腸炎、いずれにおいても治療の基本となる薬剤です。5-ASAは古くより炎症性腸疾患患者の治療に用いられてきましたが、その作用機序はいまだ明らかでなく、抗菌作用や炎症細胞からの炎症物質の産生を抑制するなどの作用機序が考えられています。内服薬の他、肛門から投与する坐薬や注腸製剤も使用できます。本邦においては、これまでサラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)およびメサラジン(ペンタサ®、アサコール®)が使用可能でしたが、2016年9月に潰瘍性大腸炎に対して新規経口メサラジン製剤(リアルダ®)が承認されました。リアルダ®はこれまでのメサラジン製剤と比べ、標的部位である大腸全域へ持続的に薬剤を送達する機序が特長です。

副腎皮質ステロイド (プレドニン®、レクタブル®、ゼンタコート®)

全身作用性のステロイドは、5-ASA製剤無効の中等症から重症例に対して使用されます。クローン病・潰瘍性大腸炎ともに寛解導入に対しては有効ですが、寛解維持には効果がなく全身の副作用の心配があるため、寛解導入後は速やかに漸減中止します。
2016年9月より、軽症から中等症のクローン病に対して全身の副作用を軽減した経口のブデソニド(ゼンタコート®)が承認され、小腸・近位大腸に炎症を持つクローン病に対して使用できるようになりました。また、局所作用性のステロイドとして潰瘍性大腸炎に対して坐薬や注腸製剤を用います。2017年12月より潰瘍性大腸炎に対して新しい局所製剤の選択肢としてレクタブル®注腸フォームが追加されました。これまでの局所製剤との違いとしてゼンタコート®同様ブデソニドであること、スプレー缶によるフォーム剤であることが挙げられます。
これらの局所作用性のステロイドは全身的な副作用が軽減されることが特長です。

免疫調節剤

6-メルカプトプリン・アザチオプリン(ロイケリン®、アザニン®

6-メルカプトプリン・アザチオプリンはステロイド抵抗例や頻回の再燃例、クローン病気術後の症例などに用いられます。また、レミケードとの併用でレミケードの効果減弱(二次無効)を起こりにくくします。これらの薬剤は開始後3ヶ月程度から効果を発揮し、寛解を維持する効果があります。また、使用に際しては患者さんによって強い骨髄抑制(白血球減少)や脱毛が出る場合があり注意が必要です。


シクロスポリン・タクロリムス (サンディミュン®、プログラフ®

シクロスポリンはステロイド無効の重症潰瘍性大腸炎に対して使用されます。シクロスポリンによる寛解導入効果は速やかかつ強力であり、ステロイド無効例の約70~80%で有効と言われていますが、長期的には半数の症例が再燃し手術となるため寛解維持療法として6-メルカプトプリン・アザチオプリンを併用することが推奨されています。
タクロリムスは本邦で開発された薬剤であり、シクロスポリンより強力な免疫抑制作用があります。本邦でステロイド無効の重症潰瘍性大腸炎に対する経口剤による寛解導入および維持について良好な成績が得られています。経口剤で十分な血中濃度が得られること、寛解維持に対しても有効であることなど、今後期待される薬剤です。

抗TNF-α抗体(レミケード®、ヒュミラ®、シンポニー®、インフリキシマブBS®)

炎症を起こす様々なタンパク質(サイトカイン)のひとつTNF-αを阻害するインフリキシマブ(レミケード®)は、寛解導入、寛解維持効果ともに優れており、クローン病の治療に大きな進歩をもたらし、潰瘍性大腸炎にも使われるようになりました。インフリキシマブはヒト由来とマウス由来の蛋白を結合させたキメラ型抗体であり、このことによる副作用の問題を解決しようと開発されたのがヒト化抗体であるアダリムマブ(ヒュミラ®)です。さらに、2017年3月に第3の抗TNF-α抗体であるヒト型抗体ゴリムマブ(シンポニー®)が潰瘍性大腸炎に対して承認されました。また、近年高騰する医療費を抑えるためにジェネリック医薬品の使用が推奨されており、レミケード®においてもジェネリックであるインフリキシマブBS®が使用可能となりました。

抗ヒトIL12/23p40抗体(ステラーラ®

TNF-αと並び、代表的な炎症性サイトカインであるインターロイキン12とインターロイキン23を阻害するウステキヌマブ(ステラーラ®)は、クローン病に対して2017年3月に承認されました。抗TNF-α抗体とは違う作用機序の抗体薬剤で、抗TNF-α抗体が効かないクローン病にも効果が期待できます。

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(ゼルヤンツ®

白血球内でヤヌスキナーゼ(JAK)というサイトカイン産生に重要な酵素の働きを抑制し、サイトカイン産生自体を抑えるトファシチニブ(ゼルヤンツ®)は、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して承認されました。寛解導入療法だけではなく、寛解維持療法にも使用できる内服薬で、中等症から重症の潰瘍性大腸炎で既存治療でのコントロールが困難な方が対象となります。

抗α4β7インテグリン抗体(エンタイビオ®

炎症性腸疾患の炎症は、免疫の主役であるリンパ球などの白血球が腸で過剰に働いてしまうことで起こっています。白血球は通常血液中を流れており、炎症を起こす際に血管壁を通り抜けて腸に移動しますが、そのためには血管壁に“くっつく”必要があります。この“くっつく”のに必要なα4β7インテグリンという物質をベドリズマブ(エンタイビオ®)が抑えることで白血球の腸への移動を抑え、炎症を鎮めます。エンタイビオ®は中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法、維持療法の点滴製剤として2018年11月に承認されており、主に腸管の免疫のみを抑制するために他の免疫抑制作用のある薬剤と比較して感染症(ただし腸管以外)をはじめとした全身性の副作用が起きづらいとされています。

抗生剤・プロバイオティックス

炎症性腸疾患、特にクローン病では、腸内細菌叢が発症・進展に関与していると考えられており、抗生剤やプロバイオティックスによる治療が試みられています。肛門周囲膿瘍を伴うクローン病や潰瘍性大腸炎の術後回腸嚢炎に対してはメトロニダゾール(フラジール®)やシプロフロキサシン(シプロキサン®)といった抗生剤が有効であることが分かっています。
プロバイオティックスとは、“善玉”菌を投与することで腸内細菌叢を整えることを目的とした治療法で、潰瘍性大腸炎術後の回腸嚢炎に対して、数種類の菌を混合したカクテル製剤が有効であったとの報告や、非病原性大腸菌の一種が活動性潰瘍性大腸炎に有効であったとの報告があり、プロバイオティックスは、今後の有望な治療法として研究されています。

栄養療法(エレンタール®

特にクローン病では通常の食事に含まれている特定の脂肪や蛋白の成分が病気に関係していると言われ、それを取り除いた形で栄養をとることで病気を治療することが本邦を中心として従来から行われています。これを成分栄養といい、含まれているアミノ酸自体が炎症を抑える働きがあることなどもわかってきています。副作用が非常に少ない治療ですが、きちんとした効果を得るには一定量以上を毎日継続して飲むことが必要です。

血球成分除去療法(アダカラム®、セルソーバ®

免疫細胞、とくに末梢血中の白血球が病気を引き起こしているという考えのもとに、我が国で開発され、潰瘍性大腸炎、ついでクローン病にも使用されるようになりました。顆粒球吸着療法(GMA)と白血球除去療法(LCAP)の2通りの機器があります。血液の一部を体外へ連続的に取り出し、白血球の一部を選択的に除去する医療機器に通し、その後 血液を体内に戻します。副作用が少ないことが大きなメリットです。